2009年11月 2日
昨日は、最近出版した自分の本が手元に少なくなってきたので恵比寿の駅ビルにある有隣堂まで買いにでかけた。駅ビルの5階である。
この恵比寿の有隣堂は本だけでなく、文具も豊富に取り揃えているので便利な店である。
規模も大きいので本も文具もほとんどのものが手に入る。
天気のよい休日であったにもかかわらず、店の中はかなりの賑わいで若い男女から高齢者まで幅広い客であふれている。
活字離れといわれている若い年代の男性女性が多数いるのは、読書ブームがやってきたのではないか、とおもうほどである。
しばらく、店内をうろうろしながら、自分の本以外に目に付いた本を買って店で勘定を頼んでいるとき、そういえば同じフロアにレコード店の新星堂があったことを思い出した。
ビルのエスカレーターのそばにあり通り道でもあるので立ち寄ってみることにした。
店を覗いてみると、まったく活気がない。店内には店員が二人、CDを探している客が二人、
ヘッドフォーンを耳に当てて試聴ひている客が一人、という具合である。しかも、レコード会社が主なターゲットにしている10代後半から20代のお客はゼロ。30台の女性が二人、試聴しているのは中年の男性で、80年代の洋楽のアーティストを聴いている。
若い人から高齢者まで店の中をうろつくのにも不自由なほど人に溢れていた本屋とこのレコードショップとの違いはいったいどこにあるのか?
気がついたことがいくつかある。
まず、本屋には本のバライエティが大きく分けて三つある。単行本、それをつくりなおした文庫本、それに雑誌である。
さらには娯楽読み物から文学、ビジネス、思想、歴史など非常に幅が広い。対象年齢層も子供から若者、高齢者まですべての年齢層となっている。加えて、どの年齢層にたいしても毎月多くの新刊が発行されている。
一方のレコード店にはCDとDVDの二種類が商品であり、音楽CDにおいては新しくリリースされた新譜と以前に録音されたものが引き続き販売されている旧譜の二種類である。先ほどの店内で中年男性が試聴していたのは80年代に録音され発売されたCDで旧譜と呼ばれるもののひとつである。CDの世界でも毎月多くの作品がリリースされるが、その80%以上は若者向けのポップスだといわれている。
さらにそのほとんどは日本人歌手による日本のポップスである。
音楽を聴く人、楽しむ人は老若男女を問わないのに、発売されるCDのほとんどは10代から20代をターゲットにした音楽である。
しかも、それはCDという形で発売されるのだが、この10代から20代がもっともCDから離れている世代であり、一説によると最近は10代でCDプレイヤーを持っていない人が
どんどん増えているという。
本はすべての年代に向けて新しい作品を出している。若い人は若い人なりに読書をたのしむ。
その一例に携帯小説の人気のあるものは印刷されて本になり、ベストセラーになる。
一方、中年も高齢者もそれぞれがその年齢が関心を持つであろう新刊本を買って、読んで、楽しんでいる。
一方のレコード店に関しては、新たに出てくるCDはほとんどが若い人向けのポップスであるにもかかわらず、その年代の人たちはどんどんCDから離れていっていて、CDプレイヤーを持っていて、携帯の違法の無料配信サイトからダウンロードするというようなことはせずに
CDを探しにきた中高年の人にとっては昔発売されたCDはあるもののなじみのあるベテランアーティストの新しい作品はめったに無い。
ある程度既にCDを持っている人にとってはCDショップに行っても新たな発見も楽しみもすくない。
こんなところの違いが本屋の込み具合とレコード店の静かさとの違いなのではないか、と考えながら恵比寿から中目黒まで歩いて帰った。