2012年7月 2日
先日、例の古本屋で、よだれの出るような本を手に入れた。
その題名は‘コクトーの食卓‘と言う、料理の本である。
この本はフランスの有名なシェフのレイモン オリヴィエが友人の詩人のジャン コクトーの好きな料理のレシピを書いた本で、そのレシピのよこには画家としても有名なジャン コクトーがレシピにあわせた挿絵を描いている本である。
ほとんどのレシピは2ページから3ページにわたるものだがそのなかで1ページちょっとの短いレシピがあったので紹介する。
目玉焼きのレシピである。
目玉焼き
私の目玉焼きの作り方はこうである。
パリ磁器で出している美しい模様の付いた皿か、純白の皿にバターを少々落とし、皿を火にかける。バターが溶けたら、必要ならさらにバターを少々加えて、皿の底が溶けたバターでまんべんなく覆われるようにする。そこで火から下ろす。
バターはほどよく薄く皿全体に広がるくらい、皿は熱しすぎないように気をつけること。バターが溶けて非常に熱くなり、しかもまだノアゼットにならない程度である。軽くじゅうじゅうというくらいに熱し、明るい褐色に色づかせたバターは実際にハシバミ色をしているところからブール・ノアゼットと呼ばれている。
さてそこで皿の底に適当に塩をふる。ひとこと言い添えておけば、塩をふるのは卵のためであってバターのためではない。
相変わらず火から下ろしたまま、皿に適当な数の卵をひとつづつ割り、必要ならフォークの先で白身のかたちを整える。
実際、非常に新鮮な卵は白身がたいへん稠密でなかなか均一に焼き上げにくいものである。もう一度火にかけ、はじめは弱火で、終わりに近づくにつれて火を強めていく。黄身の一つ一つにほんの少し胡椒(ブラックペッパー)して供する。
以上、ジャン コクトーのためにレイモン オリヴィエが作った目玉焼きのレシピである。単なる目玉焼きがこんなに立派なレシピになるとは驚きである。
念のためだが、まだこのレシピで目玉焼きを作ったことはない。