リクルートスーツと就職浪人

2010年4月21日

今年も就職活動の季節が始まったのか、街中ではリクルート姿を見かけるようになった。この中の何人が現役で何人くらいが浪人なのか?
このところ急に街中でリクルートスーツ姿を見かけるようになった。新入社員の季節だからこれらと就職活動の学生とは区別が付きにくいが一番はっきりしているのは持っているかばんである。
新入社員はちゃんとビジネスバッグを持っているが、リクルートスーツにショルダーバッグの斜めがけをしているのは明らかに就職活動の人たちであろう。
こんな姿をみながら頭に浮かんだのは就職浪人のことである。
昨シーズンの就職活動で就職できず、今年もまた就職活動をしている人たちである。
どれくらいの人数が就職浪人をしているのか、よくわからないが全体の卒業生の中で10%以上、就職希望者の中で15%から20%くらいはいるのではなかろうか?
就職浪人が就職希望者の20%いたとしよう。今年の新規の就職希望者がほぼ昨年の希望者と同じ人数だとすれば今年の就職希望者は昨年からの就職浪人プラス新規の就職希望者であるから、昨年に比べてその人数は120%となっているはずである。
求人のほうは昨年に比べて改善された、と言う話は聞かない。したがって昨年と同水準か、あるいはそれ以下でなる可能性大である。昨年と同じレベルの求人で、求職者は就職浪人が加わった分20%増えている。そこで就職できるのは昨年と同じレベルの80%だとすると、今年
の就職浪人は求職者数に対して40%、つまり昨年の就職浪人の人数に比べて倍になる計算になる。
さて、問題はこの傾向が続き、毎年就職浪人が溜まっていくのか、あるいは景気回復とともに求人が増えて就職浪人はどこかのタイミングでなくなるのか?
景気が悪くなってリストラが進んだと同時に新規の採用を減らしたからいまの就職浪人現象が発生しているのだが、景気がよくなって事業成績が改善したら企業は採用を増やすかどうか、どうもこの点に疑問がある。
企業での人減らしは収益の悪化にともない事業改善にあわせて人の削減に入ったのだが、そこで削減された人員はそもそも企業内のシステム化あるいは省力化によって既に発生していた企業内余剰人員の削減が中心であったとしたら、企業としては新規の事業でも出てこない限り新規の採用は出てこないのではないか、と懸念される。
そのような状況下でたとえ学内で留年して翌年の就職にそなえたとしても本来の新たな卒業予定者に比べて就職浪人は競争上不利であろう。
就職浪人と大学入試浪人とは決定的にちがうところがある。大学入試浪人の場合は多くの場合高校での勉強不足をあらためて浪人の間に予備校などに通い学力の充実強化をはかり翌年の入試に備える。
また、入試においては年齢は採用不採用の判断には影響がない。就職浪人にかんしては何が不足で就職できなかったのか、本人にとってははっきりしない。入試のように点数が足りなかった、と言うような客観的基準がないからであるし、ほとんどの場合企業から不採用に至った理由の応募者に対してのフィードバックはない。
したがって就職のために留年したところで既に卒業単位を取得してしまっていたりすると、とくにすべきことが思い当たらない人がほとんどであろう。
そうなるとせいぜいがんばるのはアルバイトであり、アルバイトにがんばり過ぎた結果、アルバイトでなくなってしまいフリーター生活に入っていく、ということにもなりかねない。
さて、採用側からの判断としてはなぜ不採用にするのであろうか?
もちろん、採用人数が限定されているので、あるレベルの人数まで応募者を絞りこむと実はその中から採用するのは誰でもよくなってくる。
つまり、その先は運であってもはや能力の差ではないが、そうはいっても秀でた能力をもちあわせると採用基準を超えているなかで採用される確率はずっと高くなる。
いくつも企業に応募しても採用に至らない人の場合は企業から見ると共通した問題点がある。
それは、物足りなさである。
ひょっとして就職活動本の影響かもしれないが応募書類を見ているとおよそ70%の応募書類に書かれているのは、クラブ活動でのリーダーシップ、アルバイトでの社会経験、海外旅行での見聞である。大学で何を学んだか、について書かれているのは残りの30%である。
真剣に採用を考えている企業では、よほどの特徴が無い限り、先の70%は自動的に書類選考で脱落する。
多分、多くの就職浪人はこの70%のなかの人たちだろう。これからも就職浪人は増えていくだろう。
そのなかで職を勝ち得るには、自分で起業するかあるいは就職競争に勝つことである。
企業が採用したい新卒者は学校にいる間に学校から何かをつかんできた、あるいは学んできた人材である。クラブ活動にもアルバイトにも海外旅行にも企業は学生にたいしては求めてもいないし期待もしていない。
そこで、浪人した人がやるべきことは浪人期間中になにかを身につけることである。
1年あるとかなりのことが出来るはずである。さらには単なる学生を越えた何かができることもあるだろう。
自分の在籍している学校で学ぶことがないなら、外の専門性の高い教育機関でなにか
を意図をもってまなぶこともひとつである。
大学受験浪人とちがって、残念ながら就職浪人にはあらかじめ決まったカリキュラムは無い。自分でそれを考え、身につけていかなければならないが、景気が少々回復しても就職事情はさほど改善されないだろうと思われる現在の環境のなかで一年待てば何とかなるだろうということは決して起こりそうに無い。

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