2010年6月 6日
3日ほどまえ、民主党の代表選挙の後の街頭インタビュー。
‘新しい体制に何を期待しますか?‘というインタビューワーにたいする60歳過ぎのビジネスマンの答えである。
期待しない、とか期待できない、とは言わずに‘もう、移民だね‘と答えたのはある意味で大人の答えではないか。
60歳過ぎのビジネスマンは、もう停年退職し年金生活にはいっているのか、あるいは未だ仕事はしていてもかなり自由になっているのか、そんな風に見受けられるひとだった。
この‘移民するか‘というのは最近の我々同年代(60歳代)のよく出てくる話題である。飲んでいたりするとかなり盛り上がって真剣かつ具体的な議論になる。この議論では移民する、あるいは移住するということにかんしては基本的な意見の対立はない。みんな程度の差こそあれ自分達の近い将来の姿のひとつとして考えている。
そこで、議論はもっぱらどこにするか、ということに集中されてくる。
議論のメンバーの典型的な生活環境を紹介しよう。
働いている人もいるし自由な活動をしている人もいる。ほとんどすべての人は子供は独立して家を出て行っていてもっぱら夫婦だけの生活である。
既に年金生活に入っているか、あるいはもう年金生活が手の届くところにある人たちでもある。子供は独立しているから教育費の支出はない。住んでいる家のローンももう完済しているか、あるいはあと数年で完済、という状況である。せいぜい長生きしてもあと30年と思っている。
年金を基本に考えると日本はますます暮らしにくくなると感じている。そのひとつの大きな理由が政治にはなにも期待できない、ということである。
冷静に考えると国としては財政再建が急務だろう。既に国の年間予算の半分にも税収が満たない状況である。たとえ郵貯の限度額を2000万円に上げてもその金で国債を買えるのは一次しのぎだと見ている。
財政再建となれば増税と国の支出を抑えるしかない。消費税も10%で止まるとは思っていない。そんなに遠くない時期に15%になるだろう。そうなれば実質的な年金の目減りである。
そこで、限られた手持ちの資金を有効に活用して生活するには、、、海外移住、と言うことに行き着く。
移住先の候補はいろいろ出てくる。オーストラリア、ニュージーランド,タイなど東南アジアが多い。南ヨーロッパは人気のあるときもあったが最近はむしろ東南アジアがよく話題にあがる。
この地域でもとくにシンガポールとかマレーシアの人気が高い。
ニュージーランドもオーストラリアもよいのだが日本からの距離が遠い。
移住しても年間で2,3回程度は帰国しようと考えているか比較的近くて航空料金の安いところがターゲットとなる。さらには治安の安定しているところがよい。
社会が安定しているという視点にあてば旧英国植民地で現在は英連邦の国がよい。
そこで浮かび上がってくるのがシンガポールとマレーシアである。タイは一時期人気があったが最近は政情不安定で人気はがた落ちである。
英連邦の国が評価が高いのは英国の社会制度が導入されていて社会秩序も安定していることと、シンガポールとマレーシアに関しては過去にリークワンユー、マハティールという名宰相がしっかり国をつくっているのでその環境にも期待がある。
シンガポールとマレーシアでは人気はマレーシアである。シンガポールはやはり物価が高いことが敬遠される理由である。
マレーシアは物価が安く、しかもシンガポールとは地続きだから行きたくなれば車で行くことができる。日本食もスーパーで不自由なく手に入る。さらにエアアジアができてからは成田・クアラルンプール間は東京・福岡よりも安い航空料金で行き来できる。
しかも英連邦の一員であるから英語が通じる。
気候は暑いが年寄りにとっては寒いよりも暑いほうがありがたい。
消費税の値上げがあったらマレーシアに移住しよう、ということになりそうな雰囲気である。
すでにグループで先人の暮らしぶりを見学に行ったりしているから、このトレンドは本物である。
仮に年間支出が300万円の高齢者世帯が100万世帯日本から出て行くとすると日本の市場からは3兆円の消費が消える計算になる。
多いとみるかたいしたことではない、と見るか、微妙な数字である。