2010年9月 1日
良い男(1)は日本人の永井荷風、(2)はフランス人のシャルルアズナブール
について書いたが、良い男(3)は実際に私が接することのできた人である。
大学生のころ、シャルルアズナブールを東京プリンスホテルで見かけその連れている若い女性をみて、あんなふうになりたい、とおもった。
その後、就職し、結婚し、しばらくの間は仕事に集中するので精一杯だった。40歳をすぎて少ししたころ、たまたま短い期間であったが当時、日銀総裁を退職された前川春夫氏の秘書役のようなことを臨時にさせてもらえた時があった。
その関係で海外出張のお供をさせてもらえたのだが、そのお供をしていて自分もこんな風な大人(既に自分も40をすぎているのに)に成れればよいな、と思ったことがある。それは仕事の地位とか内容とかではなく前川氏のある種のスタイルである。
たとえば、元日銀総裁だから飛行機はファーストクラスである。お供もどういうわけかファーストクラスに乗せてもらった。ファーストクラスではキャビアが出てくる。そのキャビアにはシャンパンが付いてくる。
ところが、‘キャビアには冷やしたウオッカが合うんだよ。キャビアはあぶらっぽいからね‘とキャビアを食べるのもはじめてなお供は教えてもらえる。食前の飲み物が出てきたときには‘ドライシェリーは小さなグラスでのむだろう?でも本当においしいのはウイスキーのタンブラーに氷をいれてオンザロックでのむことだよ‘といわれ同じものをオーダーしていただく。旅行は手荷物だけである。
しかも普通はお供が持たされるのであるが絶対お供には持たさない。
自分で持てる範囲の荷物にしているから持ってもらわなくてもよい、といわれる。
ホテルから出かけるときにロビーで会う時間を決める。
そうすると、必ず2,3分遅れで登場される。
早く来て周りに気を使わせないための配慮である。
とても偉い人なのに自分のことは自分で、とある意味で完全に自立した人だった。そのすがすがしさにあこがれていていまでも自分でもなんとか自立して自分のことはできるだけ自分でできるようにと心がけているのだがまだまだ、、、、である。