2011年11月21日
円という通貨をドルで買える商品として見ることができるだろう。
円が商品であるためには円が商品として売買される市場が無ければ
ならない。さらに、当たり前のことだがその価格は市場での取引で
決まる必要がある。1970年代の後半に円が変動相場制になって
からこれらの条件がみたされることになった。言い換えればそのとき
から円は商品になった、といえるだろう。
さて、商品の価格は市場において需要と供給のバランスで決まると
考える。そこでは需要が供給よりも高い場合はその価格は上がる。
逆に供給が需要より多ければ価格は下がる。
普通の商品においては市場で取引される価格が高くなると、
つまり需要が供給よりも高い状態になると、その商品を供給している
ところは供給を増やすことによって需要を満たそうとする。なぜなら
供給が需要を上回らない限り売れ続け、売上げが上がり、利益増が
期待できるからである。
円という商品を供給できるところは日本銀行であるから、日本銀行だけ
が円を生産することが出来て供給することができる。但し、通貨の市場
には日銀以外の金融機関も参加できる。たとえば外国為替取引のできる
銀行で手持ちの円を持っていればそれをうることも出来、ドルを持って
いれば円を買うこともできる。従って市場のプレーヤーは中央銀行だけ
ではない。
通常、商品には在庫がある。従って需要が強くなるとまず、在庫分を
販売する。これは日本銀行が手持ちの円を市場に放出することが
これに該当する。
在庫が少なくなると通常のビジネスでは追加生産をする。
ただ、通貨の場合、円を売り出して需要を満たした後に手持ちが減ったら
円を買い戻すことが出来る。通貨には新品も中古も無いからこのような
ことが可能になる。ただし、この買戻し行為は時によってせっかく調整
した円の価格を自ら高くしてしまう恐れがある。そうなる危険性がある
ときには市場から買い戻して手持ちの円の在庫を補充することはでき
ない。多分、今の状態がその状況だろう。
そんなときに誰かが市場で円を買い始めると円は高くなる。
日本銀行としては手持ちの円の在庫が減っているときに円買いに
来られると在庫の放出だけでは円の水準を維持できないので、そのとき
には円を生産せざるを得ない。
普通のビジネスなら円という商品の価格が高い方向に進んでいて
手持ちの在庫が減りそうならあらかじめ円を増産する。
手持ちの円を放出するのは為替介入だし、円を増産するのは円の量的
緩和に該当する。
市場が日本銀行の円の手持ち残高、すなわち在庫高を知らなければ
良いが、どれだけもっているか判ればその持ち高を全部買い取るような
行動に出て円を高くすることが可能である。事実、市場は日本銀行が
どれくらい円を持っているか知っている。どんどん買い進められた段階
であわてて円を増産しそれを放出するとする。そうすると一時的に
市場に円が増えるから、そのタイミングを見計らって円を持っているところ
が一気に円を売りに出すと円は急落することになる。
市場の大きいさに比べて日本銀行の持っている在庫が十分大きければ
市場をコントロールすることは可能かもしれない。しかし、市場での円の
大きさがどれくらいあるのか判らないとこのコントロールも容易ではない。
そこで次に考えてみたいのは市場で売買可能な、つまり流動性のある
円の通過量はどれくらいあるかである。当然ながらその量は発行残高
よりも少ないだろう。